ゲノム編集食品来月届け出開始 早くて年末以降食卓へ

ゲノム編集食品について9月14日朝日新聞は以下を報道した。

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ゲノム編集技術を使って野菜や魚の遺伝情報を変えた食品について厚生労働省は12日、事業者からの届け出を10月1日から受け付けると発表した。国内では血圧を抑える成分が多いトマトや肉厚なマダイなどの開発が進んでいる。食卓に上るのは早くても年末以降になる見通し。

ゲノム編集食品は、遺伝子をピンポイントで変える「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」などの遺伝子編集技術を使った食品。DNAを切って遺伝子を壊したり新たに加えたりすることで、栄養価を高めたり、収量を増やしたりすることができるとされる。

DNAを切って遺伝子を壊してつなぐゲノム編集食品は、自然界の突然変異や従来の品種改良と区別がつかない。安全性もこれまでの品種改良と同程度のリスクであるとして、厚労省は事業者にどこをゲノム編集したかなどの情報を届け出るよう求めるものの義務化はしないと決めた。また、農林水産省は農水産物を育てる際の生態系への影響に関する情報の提供を求めることにしている。どのような情報を提供すべきかを近く示す。

食品表示について、消費者庁は義務化せず事業者の任意とする見通しだ。ただ、ゲノム編集食品かわかるよう表示してほしいという声が多く、近く表示の方法を示す。

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ゲノム編集食品について、朝日新聞などによると、以下のような疑問や不安があるという。

(1)ゲノム編集は狙った部分の遺伝情報を変えることができる。とはいえ「何でもできると思われがちだが、そうではない」と多くの研究者は口をそろえる。ゲノム編集を使うには膨大な遺伝情報の解読が必要だが、明らかになっているのはごく一部だ。

(2)自然界で起きていることはDNAの任意の場所にランダムな変化が偶発的に起きることである。ゲノム編集でなされることはDNAの特定の場所に意図的な変化を人為的に導入することである。これを同等とみなすことは全くできない。後者は生命システムへの積極的な介入=組み換えに他ならない。

(3)ゲノム編集技術は発展途上。被害が起きてしまった時の責任はどうなるのか。意図とは異なる編集がゲノムの別の場所で起こってしまうことを「オフターゲット」という。科学者は技術的に可能ならば挑戦しようとする。それは、ゲノム編集をヒト受精卵に応用しようとする性急な動きからも明らかだ。もし想定外(オフターゲット)のことが起きた場合、誰が責任をとれるのか。

(4)今回の決定は、昨年6月に閣議決定された政府の統合イノベーション戦略がゲノム編集食品について、「今年度中に取り扱いを明確化する」と打ち出したのを受けて始まった。その直後にEU司法裁判所が「ゲノム編集作物も遺伝子組み換え食品に当たる」と、今回の日本の判断と正反対の判断を示すなど、問題は複雑で各国の対応も一様ではない。関係省庁はその達成が至上命令になっていないか。

(5)ゲノム編集食品について、一片の「通知」で済ませるのではなく、輸入食品を含め、当局が検証に堪えるデータを確実に得られる仕組みを作る必要があるのではないか。そのうえで、集めた情報を消費者にわかりやすく届け、食べるか食べないかを自分の判断で決められるようにする。そんな環境を整えることが政府の務めだ。

(6)ゲノム編集食品は、安全性審査をしないのなら、改変の有無がわかる表示は一層必要だ。表示の義務がないという国の方針が消費者の信頼を損なう方向に作用する可能性もある。

(7)ゲノム編集を巡っては国民の間に漠とした不安があることを示す東大チームの調査結果もある。ゲノム編集農作物を「食べたくない」は43%、「食べたい」は9.3%、畜産物では「食べたくない」は53.3%、「食べたい」は6.9%。

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ゲノム編集に関する図書を紹介します。

(a)「ゲノム編集とは何か」(小林雅一著、講談社現代新書

 

 

(b)「ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのかーゲノム編集の光と影」(石井哲也著、イーストプレス

 

(c)「10億分の一を乗り越えた少年と科学者たちー世界初のパーソナルゲノム医療はこうして実現した」(M.ジョンソン著、紀伊国屋書店

 

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